本記事は「企業の具体的なDXの取り組み方」シリーズの最終パートとなります。ここまでは、DXの取り組み方の概要と、DXを体験して考えたことを取り上げました。
本記事では、デジタル化・DXを自社に落とし込むのに必要な部分を取り上げ、まとめます。
DXとデジタル化の違い

ここまで、記事ではDXとデジタル化という2つの言葉を、ほぼ同じような意味合いで扱ってきました。しかし、この2つの言葉は厳密には異なるものです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のウェブページによると、次のように定義されます。
- デジタル化は業務の効率化を目的とする。アナログからデジタルへ置き換える。
- DXはデータとデジタル技術を使って、ビジネスモデルそのものを変革したり生み出したりする。
また、アナログ・物理的なデータをデジタル化することをデジタイゼーション、業務プロセスをデジタル化することをデジタライゼーションといいます。IPAの記事によると、デジタイゼーション・デジタライゼーションはDXの実現に向け、不可欠なステップとされます。
この辺りの用語の使い分けは、イメージとして覚えておくと良いでしょうが、少々難しいので、もっと簡単にしておきます。
- デジタル化はITによる効率化・自動化の導入と、データ基盤を作成するステップ
- DXはデジタル化で作成したデータを分析して見える姿を活用して、ビジネスモデルを変革するステップ
上のようにデジタル化とDXを認識しておくと良いと思います。
デジタル化のメリット

デジタル化のメリットは、データをアナログからデジタルへ移すことによりデータ基盤を作成し、そのデータがPCから扱えるようになることです。データがPCから扱えることにより、AIでそのデータを分析し意思決定に活用するようなことができます。
データ分析とデジタル化・DXとの関係が分からないという意見を聞くのですが、「自社データをアナログからデジタルに置き換えることにより、そのデータがPCなどから分析できるようになる」という流れで覚えておくと分かりやすいでしょう。
そのような文脈でデジタル化を捉えると、データを蓄積するデータ基盤の作成が重要です。昨今データ基盤関連の書籍がいくつか出ているのも、その辺の重要性を意識しての動きと感じています。
また、デジタル化にはプログラムによる作業の置き換えもあります。作業を自動化することにより、働いている人はその作業にこれまで使っていた時間を他の作業に割り当て、その作業の精度が上がるなどのメリットがあります。
パート2の事例からデジタル化のメリットを見てみましょう。
デジタル化のメリットをパート2から考える
マクドナルドのモバイルオーダーの事例から、上記のメリットを考えてみます。
自動化のメリットは注文を自動化した部分にあります。働く人の注文を聞く時間、それをレジに打ち込む時間(データ入力)が自動化により省力化できます。
デジタル化の注意点
デジタル化は、アナログからデジタルへの置き換えであると先ほど述べました。具体的に表現すると、紙で保存されているデータをPCに保存するなどもデジタル化と言えます。しかし、それだけで良いかといわれると微妙なところです。デジタル化の恩恵を受けるためには、データをPCなどのマシンから、簡単に分析できるようにしておく必要があります。
リアルに置かれていた資料をPDFとしてPCなどに保存して、デジタル化を推進したといわれることもあるのですが、PDFのデータを扱うのは思いのほか難しかったりするので、それでデジタル化できたか?と言われると、判断が難しかったりします。
この辺りは、機会判読可能なデータ作成として総務省より資料が出されています。
DXのメリット

DXは業務プロセスをデータとデジタル技術を活用して、新たな業務プロセスを生み出すことを目的とします。つまり、デジタル化を行いデータをデジタル技術から活用できる組織がこのステップを行えます。デジタル化ができていない組織は、デジタル化をまずは行いましょう。
DXのメリットは多くあります。再びパート2の事例で考えてみます。
DXのメリットをパート2から考える
マクドナルドのモバイルオーダーをDX目線で考えてみると、メリットは自動化だけではありません。どの顧客がどのような注文をしているか分かるので、パーソナライズなども将来的にはデータを活用してできるようになります。
これまで注文は誰が行っているか分かりませんでした。多くのレジには、年代と性別を推測して推すボタンがあり、これまではそのデータが活用されていたと想定されます。しかし、モバイルオーダーを活用する顧客の注文パターンは、今後はIDとともに記録できます。
注文者がIDをもつことにより、その顧客の注文が分かります。マクドナルドのアプリを見るとIDはありますが、特に年齢などは入力しなくても使えるようになっていました。
パーソナライゼーション
多くの企業がデータを活用して行いたいこととして、パーソナライゼーションがあります。パーソナライゼーションは顧客が望むものを推奨するサービスです。ウェブショッピングや新聞アプリなどで使われているものを見かけますが、現状の精度はそれほど高くなく、どちらかというと失注を防ぐ方法が多くとられているように思われます。
しかし、今後よりデータが集められる社会になれば、顧客が望むものを高い確率で予測できる世界も案外早く来るような気がします。そこにフィットしていれば、受注が増加するはずです。
デジタル化・DXを自社に落とし込む

デジタル化・DXを自社に落とし込むステップは次のようになります。
- 自社全体の業務を把握する
- どのようなデータが必要か?・発生するか?を認識しておく
- 自社のコアな価値を定義する
- コアな価値に従って業務プロセスのデジタル化を検討する
- 必要であればコンサルティングを導入する
- デジタル化に利用するツールは複数比較する
- 大きな部分に導入するのではなく、小さな部分から取り組む
- 意思決定過程は明確に残しておき、あとから振り返れるようにしておく
- デジタル化の評価は定期的に行う
- 評価は公平に行う
- 失敗は許し、その原因を究明する
- 失敗の原因を次のデジタル化に活かす
- デジタル化から生まれたデータを活かしてビジネスの付加価値を生み出す(DX)
- DXも定期的に評価し、継続・廃止を決める
データ分析・活用

デジタル化やDXの文脈で、データ分析という言葉もよく聞かれます。デジタル化・DXの流れでデータ分析を考えると、デジタル化により業務データが蓄積され、蓄積されたデータを分析すると業務に役立つ知見が生み出せます。
DXでは、それらの業務データを分析・活用して新たなビジネスモデルを作成します。
決断にデータ分析・活用を利用
もっと具体的にデータ分析・活用に関して取り上げると、最終的に意思決定・決断の材料を作るツールとして、データは活用できます。
たとえば、自社の製品がコロナ禍で売れなくなったという状態があるとしましょう。その状況を打破すべく、何か新しいものを作らないといけない。そんな時、どのようにして新商品の作成アイデアを作るでしょうか?
従業員の方の経験からのアイデアを取るというのも方法の一つかもしれません。一方、データを活用してアイデアを作るなら、政府の発表する家計調査のデータから、家計の消費のトレンド変化を捉え、そこからいくつかアイデアを作ることができます。
それらのアイデアから、最終的にどのアイデアで行くか決定するのは経営陣の仕事です。次に、アイデアが実行されれば、それがうまくいっているのかどうかを業務の売上・営業利益のデータを管理し、継続・廃止を決めるような決断を行えます。
データ分析・活用は難しく考えられるかもしれませんが、最終的には会社の意思決定・決断に使われるものとなります。数値化されているので、理解しやすいという利点があります。
意思決定の自動化
意思決定分野を調べていくと、意思決定の自動化にアルゴリズム・機械学習の活用が出てきます。長目では現在この分野を研究し、活用を目指しています。
社内にデジタル人材を育てる

デジタル化・DXはこれまでに確認したような、多くのことを実施しなければなりません。経営者の方にこのように話すと、「自分は全く分からないし、無理だな」というような感想を持たれることも多くあります。そのために、長目のようなデジタル化・DXのコンサルティング企業がある訳ですが、ずっとそれに頼りきりでは会社のDXはうまくいかないと弊社では考えています。
どうすべきか?というとやはり、経営者の方も少しでもこの辺りの情報を理解し、そのうえで自社にデジタルに強い人材を育てるべきです。
その辺りの人材育成のご助言・お手伝いも長目では行わせていただいております。ご関心をお持ち頂ければ、長目までお問い合わせください。
まとめ
以上、デジタル化・DXについてを取り上げました。
まとめると次のようになります。
- 企業は事業上の決断にデータ分析を活用できる
- 企業内のデータを使えるよう、データ基盤などを整えるステップがデジタル化
- データを活用して、ビジネスモデルを変革するステップがDX
その導入前には、自社の全ての業務を把握し、自社のコアな価値を理解するなどのステップが重要となります。
そして導入時には、小さな部分から取り組みます。その理由は新たなことに慣れるには時間がかかること、導入には失敗もつきものだからです。
会社の文化には、失敗を許容・失敗から学ぶという部分を作りましょう。小さな失敗を改善し、大きな成功を手に入れましょう。
導入後は、業務から発生するデータを頻度を多く確認し、その改善を繰り返します。データを確認するダッシュボードを毎日でも確認できるようにしておくと、変化を捉えられるようになります。
そして、社内のデジタル知識の向上も重要になります。デジタル知識の高い人材を育て、デジタルツールを活用し、新たな収益源をどんどん作りましょう。