2021年11月20日土曜日に行われたPyCon mini SHIZUOKAにて、合同会社長目の代表の小川英幸が「KKD(勘・経験・度胸)に位置データを加えよう!」というタイトルでトークを行いました。
プレゼン概要
世間ではDXなどと声高に叫ばれていますが、どのようなことを行なったら良いか分からない企業も多いようです。そのような企業では、これまでデータの活用や収集が行われてきておらず、いきなりツールを導入しても役に立たずに終わります。
そのような企業でオープンデータを活用して、DXを始めてみようというのがこのトークの主題となっていました。そして、そのデータ活用にはこれまで各個人に蓄積された勘・経験・度胸と呼ばれるものが役に立ちます。
今回のプレゼンでは「これまでデータ活用して来なかった保険会社が、静岡地域でデータを活用して子供向け商品を売りはじめる」という仮定のもと、国勢調査のデータを活用して、その営業エリアの選択とその後を紹介しました。ちなみにこれまではチラシを配って営業していたという仮定もおきました。
企業はデータを活用するで、各個人に散らばっているノウハウを定量化し、会社の資産とできるという大きなメリットもあります。
データを使って営業エリアを選択する
商品を売るエリア選定に、皆様はどのような条件を考えますか?
正解は分かりませんが、当社ではその商品のニーズが高いエリアを選定したいと考えます。
今回の仮定「子供向け保険商品を売りたい」場合、子供の多いエリアを営業エリアに選びたいですね。一方で、少子高齢化の進む日本ではそのようなエリアを選択するため、どうしたら良いか?と途方にくれられるかもしれません。
そんな時に使えるデータが国勢調査のデータです。
国勢調査
国勢調査は、国により全国で5年に一度行われている調査です。その調査では、下の画像のように住人に関するデータが集められます。

そして、このデータは個人が特定できないようなデータが集計されて発表されています。そのデータの発表ですが、市町村や1km、500m、250m四方などさまざまな広さで行われています。また、それぞれがどの場所にあるかわかる、位置データもついています。
つまり、この街の住民の年齢構成、どんな仕事に就いている、マンションが多い地域であるかなどが、統計のデータから得ることができるのです。
ということで国勢調査を使うことにより、今回のケースで言えば「子供向け保険の売りやすい子供多い地域」がすぐに探せるということです。
実際にデータを使って子供の多い地域を探す
ということで、子供の多い地域を国勢調査のデータを活用して探していきます。今回のトークでは、まずは人口が多く、子供の割合が多い地域を探しました。
その上で、会社として子供が小さい方が保険に入りやすいのか、大きめの方が入りやすいのかという疑問があったと仮定しました。そのため、「6歳未満」が多い地域と「6歳から18歳未満」が多い地域をピックアップして、どのような傾向が出るかを試します(営業1)。
上記テストは「6歳未満」も「6歳から18歳未満」の両方が多い地域ではできません。その地域は代わりに、別のテストを試す地域として使います。
この会社では元来チラシを配って保険商品を売ってきたのですが、最近はマンションにチラシが入れにくいという意見が出ていました。そこでマンションが多い地域とそうではない地域をピックアップした上で混ぜて、チラシ営業とデジタル広告という2つの営業手法、どちらが有効であるかのテストを行う地域とします(営業2)。

プレゼンでは実際のデータを処理して、どのようにエリア選択ができるかも示しました。

その後
以上、データを使ってエリア選択を行うことにより、これまでよりも確率の高い営業ができるようになりました。
その後に関してですが、実際に営業をデータで選択した地域に行っていきます。そして、その結果をデータとして残します。それを分析することより、これまでより精度が良いのかや、幼い子供が多い方が加入するのか、デジタル広告の効果などが計測できます。
その上でまた、新たな施策を試すということが、今後の展開となります。よく言われるPDCAサイクルを回していくことにより、データを活用した強い組織が作れます。

勘・経験・度胸のいきる場所とは?
ここまでの話だと、タイトルの勘・経験・度胸のいきる場所がどこか分かりません。
勘・経験・度胸の生きる場所は、どのデータが役立つか?を決める部分です。この部分でここのノウハウが活かされます。この行動は振り返り、新たな施策を打つ点でも必要となってきます。このフィードバックが効率的であるほど、データ活用は進むことになります。

逆に、最初に活用するデータの要素があまり効果のないものだと、データを活用したが効果はなかったというようなものとなります。なので、どれほど勘・経験・度胸の中からデータ分析に役立つものを引き出せるかというのも、データ活用をうまく行う上では重要となります。(しかし、最後に述べますが役立たないことを見つけるのも実は有用ですし、最初は失敗に終わっても継続することにより、データ活用の効果は出ます)
まとめ
以上のように、今回は「保険会社で新製品の営業をはじめる」とという具体的な内容のもと、データ資産のない会社におけるデータ活用の進め方のプレゼンテーションを行いました。
データを活用する場面では、勘や経験も重要な材料となります。それらをうまく引き出すことにより、ノウハウが会社の資産となります。一方で、データを活用したからといって、素早い成功が望めるわけでもないということもわかっていただけたかと思います。
しかし、PDCAサイクルを早く回すことにより、役立つデータ・役立たないデータの取捨選択が進み、何年か後には勘・経験・度胸のみで経営している企業には大きな差をつけていることでしょう。
最後に、先にデータ活用が進んでいた金融界のトップクオンツのDavid E Shawの言葉を紹介しました。
